吉川真梨

第8回 体力をつける

何かを考えたり書いたりすることには、非常にエネルギーを使います。

「勉強するとぐったりする」「作文を書くのは疲れる」「レポートはしんどい」というのは、ある意味では当然です。

最近は「鉛筆を持ってノートに書くのってめんどくさいし疲れる。タブレットならやりやすい」と言って、字を書くことそのものに、高いハードルを感じる小学生をよく見かけますが、これも基礎体力の低下との関係が少なくありません。

勉強そのものにも身体的エネルギーは必要です。

思考するための筆記には、手や腕の筋力を使います。目を使うにはその筋力、座るには腹筋と背筋、思考するときには酸素を脳に取り込むための、下腹を使った深い呼吸がなければ、疲れはどんどん溜まります。

とくに大学受験において、高校生には「勉強に必要な体力を早くつけなさい」と話します。

高校3年の夏に、一日12時間以上勉強できる体力がなければ、難関大学合格は厳しいです。

ただ必死にかじりついて机に向かう「ガリ勉」ではありません。

「12時間以上思考できるか、ペンを走らせることができるか」という意味です。

誤解を恐れずに言えば、ごろ寝しながらでも問題の解答をしっかり出せるなら、そして、殴り書きでも一問一答形式で答えが書けるなら、それも勉強時間にカウントしてもOKです。

ここで、なーんだ、じゃあ夏から頑張ればいいんだ!とか、えー12時間なんて絶対無理!とか、生徒に声高に言われるのを毎回押しとどめるわけですが、ここからが説得のしどころです。

たとえ根性があるとして、勉強が好きだとして、毎日12時間続けられますか?・・うん、そりゃそうです、きついです。
ましてごく一般の高校生なら、勉強に飽きて当然です。

じゃあ飽きない工夫をすればいい。
得意(好き)な勉強と苦手(嫌い)な勉強とをサンドイッチにしたり、問題演習の前後には音読やリスニングを入れたり・・・。要するに、飽きたからと言って、勉強そのものをやめないでください。

高3夏になる前に、志望校を決め、過去問を解いておきなさいと言われるのは、夏に長時間勉強に耐えるための「基礎体力テスト」だと思ってください。あくまで実力を分析するため、合格の戦略を立てるためにあります。

やたらに落ち込んでやる気をなくす生徒がいますが、だめだめ、まだ始まったばかりだぞと、ひたすら励まします。

そして高3の1学期に、受験勉強の基礎はひととおり済ませましょう。

自分の決めたスケジュールの失敗や、定期テストとの両立、模試のE判定、友達との比較、家族との生活スタイルの変化・・・それはもうさまざまなことが起きます。失敗だらけの日々でも、それでいいのです。ひたすら励まします。たまに叱り飛ばします。

こうやって、生徒は勉強にも精神にも「基礎体力」が身に付きます。そして、「あいつなんか変わったよね」と周りが気づき、「自分、なにかが変わったかも」と本人が自覚したとき、受験のための本当の「自立」が完成します。

いよいよ高3の夏。12時間の壁を突破し、合格への“修業”が始まります。

ここから先は、いまは書きません。私が先んじて見せるよりも、それぞれが体感してほしいと思います。