裏千家茶道カテゴリー記事の一覧です

2019年3月2日

コミュニケーション, 真花塾にほん伝統文化プロジェクト, 裏千家茶道, 講師ブログ

ひな祭り。古典から”女の子の幸せ”に思いを馳せる

明日は3月3日、ひな祭りです。写真の菓子はその名も「蛤」。貝あわせ(貝覆い、ともいまは呼ばれます)に使われる蛤の、そのどっしり座ったようなたたずまいが素敵です。(このあと、濃茶とともに皆さんでいただきました)

もともとは貝殻のもつ本来の美しさを競う遊びだったようですが、だんだんとその貝の内側に絵や和歌が描かれるようになり、いわば”蛤の神経衰弱”ともいえる、一対の貝を探し当てる遊びとなりました。蛤は、その対になっている貝同士でしかぴったりと合わないことで、仲の良い夫婦をあらわすとされています。

私(真花塾塾長)がこの貝あわせを初めて知ったのは、『徒然草』百七十一段、「貝をおほふ人の、我が前なるをばおきて、よそを見渡して、人の袖のかげ、膝の下まで目をくばる間に、前なるをば人におほはれぬ。よくおほふ人は、餘所までわりなく取るとはみえずして、近きばかりおほふやうなれど、おほくおほふなり」です。


「自分の目の前にある貝には注意が向かず、ほかの会を見渡して、人の袖の影や、膝の下にまでキョロキョロやっているうち、自分の目の前の貝を人に取られてしまう。上手でたくさん貝を取る人は、そんなに人の貝の近くまで取ると思わせないようにして、自分の近くの貝ばかりを取っているように見えるけれども、ふたを開けてみるとたくさん取ってしまう。」

あぁー修学旅行でトランプの神経衰弱したとき、こんなことあった、あった!(笑)こんな鋭い観察眼を持つ吉田兼好ってすごい。

ほかにも、兼好には賀茂際の斎宮行列を見物して騒ぐ人々の姿を冷ややかに見るエピソードがありますが、このような貝合せのような「ゲーム」にも人柄というのはよくにじみ出ますよね。

さて、いまはこのような貝合せはもちろん、お雛様の七段飾りもなかなか見なくなりましたが、やはり女の子の健やかな成長と幸せを願うというのは変わりません。幸せのかたちも、蛤のように相性ぴったりの人に添い遂げる、ということばかりではなくなってきていますが、その分ひな祭りへの思い入れも人それぞれ、ご家庭それぞれだと思います。

お菓子をいただきながら、そして一服のお茶をいただきながら、自分の人生や将来、本当の望みについて、話し合うひとときになれば幸いです。

【今回の菓子】
銘:蛤
御製:とらや

2018年11月17日

真花塾にほん伝統文化プロジェクト, 裏千家茶道

新プロジェクトへ向けて!【お稽古日記~裏千家茶道編】

現在、高校生向けのネット塾・真花塾は、古典をつたえる・日本の良さを改めて情報発信していくという目標を決めて準備に取り掛かっています。スタッフも増員!新プロジェクトに向け、代表である吉川自身もますますお稽古に力を入れています。
日本の伝統を伝えるために、私たちができることは何か?それは「いま」に伝統を取り入れて、その良さを体感することにあります。そしてその楽しさを自分の言葉でほかの人に伝えていけたら・・・。
今回は、そんな吉川のある一日をご紹介いたします!

いざ炉開き。お茶の“正月”で気分を一新

炉のお稽古でした。茶道の正月ともいわれる11月、気持ちも新たに華やぎます。

炉の茶釜に湯が沸いたほんのり暖かい四畳半。初入りして先生にご挨拶すると、あぁ、また新しい一年を精進しようと清々しい気持ちになります。

掛物は「」。「かん」とよみます。「新しい節目、はじまり」という意味なのだそうです。

さて、このように始まった霜月の茶の湯ですが、もちろん変わらないこともあります。

それは所作。半年ぶりとはいえ、普段どおりの炉の点前。そして客の作法も普段どおりに、楽しく粛々と進みます。

そして普段どおりといえば、茶の湯に親しむ人ならきっと誰もが心を砕くもの、それは「茶杓の銘」ですよね。

え?「茶杓の銘」?何それ?のあなたに!

茶杓(ちゃしゃく)とは、お茶の器や茶入れに入っているもので、抹茶をすくうための道具を呼称しています。その呼称やその銘がついた道具を季節や趣向ごとに改めて、使い分けることに味があります。

また、薄茶の場合は棗と茶杓を、お濃茶の場合は茶入・仕服・茶杓を客に拝見に出し、皆が手に取って目で見て、ともに味わうことができます。

茶杓の銘には、茶杓を削った人の感性や、その人自身を表すといわれ、拝見する客は作者の持ち味を感じ取るようにします。感性と感性のぶつかり合いとも言えるのではないでしょうか(^^♪

なぜなら月ごとに銘はあります。そして、お稽古では由緒ある茶杓を、実際に誰もが使えるとは限りません。そんなときこそ、自分の点てた茶をより楽しんでいただきたい。だからこそ、「銘」を知って使いこなしたい!という思いがわいてきます。

例 11月の銘

山の錦(やまのにしき)、落穂(おちぼ)、野菊(のぎく)、小倉山(おぐらやま)

楓(かえで)、落葉(らくよう)、紅葉狩(もみじがり)、閑居(かんきょ)、錦の山(にしきのやま)
唐錦(からにしき、)吊るし柿(つるしがき)、梢の錦(こずえのにしき
)などなど

私は毎回、お稽古場へのバスに揺られながら、「今日はどんな銘にしようかな」と一生懸命考えながら稽古に向かっていますが、きっと皆さん、稽古のときは心もアタマも全力投球なのかもしれませんね。(^-^)

私はこの日、「梢の秋」を思いました

「こずえ」という音には「すえ」、つまり「末」という漢字もあてられます。(恐るべし漢字のチカラ!)だから「秋の末」ともなります。掛詞なのですね!ちなみに陰暦9月の言葉なので、新暦にあてはめると9月下旬から11月上旬となります。ちょうどこの時期にぴったり!

朝晩の冷え込みもきりきりとしはじめで、もうまもなく冬になるぞ、という感じ。とくに私の住んでいる三田市は、散り葉の段階とはいえ、とってもとっても寒くって、早朝から稽古に向かうときのその感覚やや木々の様子も心に浮かべました。
言葉は意味だけではなく体全体で受け止め、発することが大事!
茶杓の銘は、なんだか「知識」「教養」を問われる感じがしておっかないと感じる人も多いと思います。私も若いころはとくにそう思っていて、知らないと恥ずかしいからとノートを作って必死で丸暗記したり、実際には自分で調べたり感じたりしたこともない言葉を「ほかの人が言っていたから」「知っているから」という理由だけで口にしたりしていました。

でも本当はそういったものではなくて、自分の五感と真心で、茶席をともにする皆さんを思いながら、お伝えしたいと思うようになりました。

お道具も稽古も知識教養も、現代ではごく一般の人がいざ自分もやろう!と思っても、そう簡単には本格的にできるものではありません。でもその心は、日本の財産として受け継いでいきたいものですね。

2019年スタート!真花塾の「にほん伝統文化プロジェクト」
真花塾では、2019年から「にほん伝統文化プロジェクト」を始動いたします。
そのひとつとして、おもに茶杓の銘と掛物、陰暦のことばを解説しながら、多くの人に楽しんでいただき、役立てていただけるコンテンツを作ります。

多くの「これこそ日本!」と思える素晴らしい文化を伝えていく所存です。

ぜひ「こんな情報があったらいいな」「ことばや背景を知りたいな」というリクエストもお待ちしております。学校茶道に励む中高生や茶道部の顧問の先生も応援!

茶の湯に親しむ者の一人として、塾長吉川もますます稽古に励んでまいりたいと思っております。

【写真の菓子】御製:西村清月堂(兵庫県三田市) 銘:木枯し